法律情報
債務整理の基礎知識
- 第1回 その借金、返せますか?
- 多重債務問題を解決するためには、今の状況を正しく知ることが重要です。今ある借金をこのまま返していくことはできますか?
最初にちょっとしたクイズをやってみましょう
突然ですが、借金のことについてお話しする前に、ちょっとしたクイズをやってみましょう。ちゃんと計算するとめんどくさいですから、おおざっぱに考えてもらえれば結構です。
【問題】
30万円を年利18%で借りて、毎月1万円ずつ返済した場合、借金全部を返し終わるまでにどれだけかかりますか?また、トータルでいくら払うことになるでしょうか?
どこから、いくらぐらい借りていますか?
今ある借金を返していけるかどうかを知るためには、まず、どれだけの借金があるかをしっかり整理することが重要です。
どの法律事務所でも同じだと思いますが、借金の問題で相談に来られた方には、まず始めに「どこから、いくら借りていますか?」と質問します。まあ、当然と言えば、当然ですね。借金のことで相談に来られたのですから。
しかし、あまりにも多くの業者から借りすぎて、どこから借りているかわからなくなっている人もまれにいます。また、毎月の返済額はわかるけれども、借金の残高はよくわからない、という人もときどきいます。
借金の額を最初に聞くのは、借金の多い、少ないによって、返済できるかできないかが大きく違ってくるからです。借金が多ければ返済は難しいでしょうし、借金が少なければなんとか返していけるかもしれません。
しかし、借金の額がわからなければ、このまま返していけるかどうかを考えることもできません。本人は「このままではまずい」と感じているのですが、どの程度まずいのかわかっていないのです。
ですから、今のままで借金を返していけるかを理解し、借金問題を解決していくためには、まず、今借りている借金を正しく整理することが重要になってきます。具体的には、どの業者に対していくらの借金が残っているかを紙に書き出してみて、一覧表を作ってみるといいでしょう。このような一覧表(「債権者一覧表」といいます)があれば、弁護士に相談するときにもスムースに相談することができます。
毎月の生活費はいくらぐらいかかりますか?
借金について質問した次に、「毎月の手取りの収入はいくらですか?」と収入について質問します。これについては、答えられない人はほとんどいません。
その次ぐらいに、私の場合は「毎月の生活費はいくらぐらいですか?」と質問します。
収入や生活費について質問する理由は、どれだけの借金を毎月返していけるかを確認するためです。
よくよく考えればわかることですが、収入から生活費を引いた残りの範囲でしか、借金を返していくことはできません。毎月の収入が20万円だとすると、そこから生活費に18万円使ってしまえば、返済にあてることができるお金は2万円しか残りません。生活費に収入の全部を使ってしまえば、返済にあてることができるお金はゼロです。
しかし、私の経験で言わせてもらうと、毎月かかる生活費をちゃんと言える人は、ほとんどいません。
多重債務の問題を抱える方の多くは、「毎月の収入から生活費を引いた残りの範囲でしか返済できない」と考えているのではなく、「毎月の収入から返済額を引いた残りの範囲でなんとか生活しよう」と考えているように思われます。つまり、生活費よりも返済のことを優先して考えているのですね。そのため、生活費を切りつめさえすれば、借金を返済できると簡単に考えているように思えます。
しかし、実際には生活費を切りつめることはとても難しいです。結局、生活費が足りなくなり、生活費を補うために新たに借金をしてしまいます。
でも、これって本当に「生活費不足を補うための借金」なのでしょうか?収入からまず生活費を引いて、つまり返済よりも生活費を優先して考えると、実は借金の返済にまわすお金が足りなくなったために新たな借金をしていることがわかると思います。つまり、生活費のための借金ではなく、借金のための借金なのです。
借金返済のための借金をするようになると、返済は困難です
借金のために借金をするようになると、新たにした借金を返すために、また別の借金をしなければならない、という悪循環が始まります。こうなってくると、借金を返しきることはとても難しくなります。というのも、借金には利息がついてくるからです。
ここで、先ほどのクイズの答え合わせをしようと思いますが、30万円を年利18%で借りて、毎月1万円ずつ返済した場合、おおざっぱに計算すると、全部返済するまでに約3年4か月かかり、トータルで約40万円を支払うことになります。
「30万円しか借りていないのに、どうして40万円も返さないといけないの?」と思われる方もいるでしょうが、こんなことになってしまうのは、借金には利息がつくからです。
借金をしても、すぐに返してしまえば、ここまでのことにはなりません。例えば、ボーナスですぐに返してしまえば、利息はもっと少なくて済みます。しかし、少しずつ分割で返していくとなると、利息はこんなにも大きくなってしまいます。
しがたって、借金の返済にあてるお金が足りないからといって新たに借金をすると、借りた金額に利息を含めた金額を後で返さないといけなくなります。そうすると、借金の額はどんどんふくらみ、最終的にはとんでもない金額になってしまいます。
でも、多重債務の問題を抱える方の多くは、「自分は生活費不足を補うために借金をしている。生活費を切りつめれば何とかなる」と思っているので、借金を返すための借金をしているとは考えません。なので、返済が困難であるということにもなかなか気がつかないように思います。
家計簿をつけましょう
借金をこのまま返していけるかを考える場合のポイントは、@借金、A収入、B生活費の3つです。
収入から生活費を引いた残りが、毎月の返済額よりも多い場合は、このままでも返済は可能です(実際は、病気や、冠婚葬祭などの臨時の支出があるかもしれませんので、少しは余裕が欲しいところです。)。
しかし、収入から生活費を引いた残りが、毎月の返済額より少ない場合は、返済は難しくなってきます。貯金を取り崩して返済にあてることができればいいのですが、それもできなくなり、新たな借金をするようになると、まず返済は困難になります。
このように、今ある借金を返していくことができるかをしっかり考えるためには、毎月の生活費にどれくらいかかるかがわかっていないといけません。そのためには、家計簿をつける方法が一番いいと思います。
家計簿をつければ、毎月いくらまでなら借金の返済にまわせるかを知ることができます。また、家計の無駄を見つけて節約することもできるかもしれません。
結局のところ、借金の問題は金銭管理の問題です。しっかりと家計簿をつけて金銭管理を行っていれば、多重債務になってしまうことも避けられるでしょう。仮に収入の減少などで、返済が困難になっても、早めに対応をすることが可能です。
今回のまとめ
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